「法則」は存在するか?

From:Dr.kappa
月曜日、午後11時02分
日本、本州

前回のメールで、私の理論の公理2の解説をしました。

私たち人間は1人1人アイデアのネットワークを持っており、その上で認識を行なっているという考えです。

また、私の考察は数学や物理の方法を使った科学的なものであるという点も強調してありました。

そこで、この公理がもっともらしい証拠をもう少し挙げておきましょう。

前回も書いた、

・言語の習得方法と、人によっても時間の経過によっても言葉の「意味」が変わること
・プライミング

が証拠の2つです。

今回はもう2つの実験結果をご紹介します。

簡単な証拠は以前お話ししたアメリカの犯罪の話です。

ザッと復習しておきますと、当時、ニューヨーク市では犯罪が多発していました。

この事態を重く見たニューヨーク警察は、罪を犯した者達に指導する代わりに、地下鉄内の落書きを落とすという変わった方法を取ります。

その結果どうなったか?

ニューヨーク市に住んでいる人たちは変わっていないにも関わらず、犯罪が激減したという嘘のような本当の話です。

この事例は構造の力として話しましたが、アイデアネットワークの観点からも話すことができます。

意識しようがしまいが、落書きが目に入ることによって、関連したアイデアが刺激されます。

そうして刺激された「ここは秩序の無い場所だ」というアイデア・メッセージが、犯罪を犯しやすい環境・構造の正体に他なりません。

実際、この事例を解説した本では、この環境の変化が犯罪を減らしたという説明をしています。

これで独立な3つの証拠が揃いました。

私が知る理論物理学者の中には、
「独立な3つの証拠があれば正しい」
と言う者もいます。

(そのせいか、私たちの業界の論文では3つ以上の例が調べられることが多いです。)

したがって、以上の証拠から公理2は正しそうだと言えます。

ですが、念押しでもう1つの証拠を挙げておきましょう。

これはライティングにも応用しやすい事例だからです。

1980年代初頭、ニューヨーク大学の心理学教授Jerome Brunerらが行った実験があります。

その実験では2歳の女の子の独り言を観察しました。

すると、彼女の両親と話している時よりも独り言の方が発展的だったことがわかったのです。

…と、これは余談でした。

重要な点は、彼女が話していた言葉の形式にあります。

2歳の女の子がどんな言葉を紡いでいたと思いますか?

実は、物語形式だったことが観察されました。

つまり、子供は、物語の形式にすることによって世界を認識しようとしていると言えるのでは無いでしょうか?

この方法は、現代思想の観点から考えても理にかなっています。

というのも、私たちの周りに存在するのは単なる事実に過ぎないからです。

(もしご興味がありましたら、分析哲学のブレイクスルーとなった、この本を読んでみると良いでしょう。

ただし、非常に難解なので、万人にはオススメしません。

ですが、顎の力を鍛えつつ、人間と世界についての理解を深めたい場合は、この本こそ源流と呼べる書物です。)

各事実の間には何の関係もありません。

因果関係なども人間が世界を認識するために捏造したものに過ぎません。

(自然界の法則を明らかにしようとする理論物理学者の1人が言うのは皮肉っぽいですが。)

事実の集まりから「パターン・法則」を得ようとする「本能」は生物学的な背景があるのだろうと私は考えています。

人間の祖先の時代には、生き抜くことが大変だったので、たとえランダムであったとしても、天敵が現れる「パターン」を見つけようとしていたのでしょう。

その影響か、現代の人間にまで、ランダムな事象にも法則性を見出そうとする傾向が観察されています。

(例えばサイコロを使った実験などで。)

少し脇道に逸れましたが、人間はこのように関係を付けることで理解しようとします。

したがって、2歳の女の子が行っていたように、物語という一連の出来事の流れに埋め込んであげることで理解しやすくなると考えられます。

この事例はライティングにも即座に応用できますね。

物語という形式が人間の頭に入りやすいので、セールスのような説得的言葉も物語形式にしてあげると非常に強力になります。

私たちが子供の頃に聞いた物語を今でも思い出せること、世界で最も読まれている本、聖書が物語形式で書かれていること、我々の感情を強く動かす映画や小説が物語であることには共通の理由があります。

最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

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