アイデアネットワーク

From:Dr.kappa
月曜日、午後10時32分
日本、本州

「売れるセールスコピーを書きたい時、何をどの順番で書けば良いのか?」

「心に響く効果的な言い回しがすぐに浮かばない」

コピーライティングを学ぼうとされている方々の声として、上に挙げたようなものが聞かれます。

(コピー・言葉の重要性に気付いているというだけで、素晴らしいことです。)

以上のような需要がある為、

・すぐに使えるフレーズ集
・心理学に基づいたテクニック集

などが流行っています。

需要があるところに求められているものを提供するのはビジネスの鉄則です。

したがって、これらの情報の提供はビジネスとしては「正しい」。

ただし、それはあくまで販売者の立場から見た場合の「正しさ」に過ぎません。

購入者の立場からは寧ろ「誤り」の場合も少なくないので注意が必要です。

今の場合が良い例でしょう。

以前にも何度かお話ししましたが、ビジネス上の重要度は
市場>オファー>言葉・コピー
です。

つまり、コピーは最も重要度が低いんですよね。

(以前も例に出しましたが、砂漠で砂を売るのは、どんな天才的なコピーライターにも困難です。

一方で、どんな素人でも水を売ればすぐに売れてしまいます。

そもそもの需要がある市場だからです。)

ですが、

・稼げる市場の選び方
・売れるオファーの作り方

は状況に応じて考える必要がある為、提供者としては教えるのが難しい部分でもあります。

誰でも気付くような、狙い目の市場は既に誰かがビジネスを行っている筈なので、気付きにくい狙い目を見抜く力が必要になって来るからです。

言い換えると、

・すぐに
・簡単に

できない部分なので、購入者の側も魅力を感じない場合が少なくありません。

それ故、小手先のテクニックばかりに走り、結果が出ない方が多いのではないでしょうか?

事実、冒頭に挙げたような情報で稼げる方が続出しているのであれば、今頃世界は億万長者ばかりの筈です。

というのも、コピーライティングや心理テクニックの書籍は何10年も前から出版されているので。

ですが、それにも関わらず今だにこれらの情報がもてはやされている現実こそが、小手先のテクニックだけでは売れないことを示しています。

私自身は前回も書いたように、子供の頃から源流に惹かれる傾向があったので、テクニックには最初から興味がありませんでした。

そうではなく、「人間はどうやって世界を認識しているのか?」というところに関心があり、独自に色々と調べたり、考えたりしてきました。

そうやって構築してきたのが、数学や物理学の方法を使った理論です。

その土台となっているのが、いくつかの公理。

今回のメインメールでは、その2番目についてお話ししたいと思います。

抽象的な話になりますが、まさに人間がどのように世界を認識しているかに関わる公理なので、少し辛抱してお付き合い頂ければと思います。

わかりやすいように具体例から始めましょう。

「水」という言葉・概念をどのように習得しましたか?

もしかしたら、小さい頃にご両親がコップに入れた水を指差し、「ミズ」と繰り返し発音して聞かせてくれたご家庭もあるかもしれません。

ただ、まだ言葉を習得していなかった我々は、そのオトが何を指しているのかを認識できません。

言葉を持たないが故に、物事を区別することもできません。

したがって、「ミズ」と表現されたものが、もしかしたら

・コップ
・水の温度
・水の入ったコップを持ったポーズ

を指していたのかもしれません。

既に言葉を習得している我々は、「そんなわけないじゃん」と判断できますが、何の概念も持たない赤ちゃんにはそれができません。

では、どうやって「水」を習得したのか?

心理学や脳科学、現代思想など、様々な研究結果に個人的観察も加えて、人間は次のように言葉を習得すると私は(現時点で)考えています。

まずは(例えば)ミズという音が発せられた膨大な状況が蓄積されます。

そして、ある程度の経験が蓄積されると、それらの状況に共通するパターンとして「ミズ」という音の「意味」が推測されます。

言い換えると、「ミズ」という言葉の意味は、今までの経験によって変わって来るということです。

水のような具体的な言葉であれば、経験の違いによる意味の揺らぎは小さく、気にする必要はありません。

ですが、抽象的な言葉(例えば「愛」「幸せ」「やりがい」など)になってくると、それらに接した状況が人によってかなり異なるので、同じ言葉であっても人によって(推測される)意味が変わってくるということになります。

また、同じ人であっても、時間の経過によって経験が増える為、言葉の意味もまた変わってきます。

これが、

・同じ本
・同じ曲
・同じ映画

であっても、時間が経ってから再び接すると受け取り方が変わる理由です。

もしかしたら、ここまでの話を聞いて、「言葉の習得法はわかった。だが、それをどうやってライティングに活かすのか?」と思われているかもしれません。

このメールでは最後に1つだけ応用の仕方をお話ししましょう。

以上のような、人間の世界・言葉の認識の仕方から、ある言葉・アイデアを受け取ると、そのアイデアが関連する状況が想起されるだろうと予想できます。

実際、この予想は正しそうなことが、心理学などの実験からわかっています。

具体的には、プライミングがこのメカニズムから理解できるだろうと私は考えています。

プライミングというのは、先行する入力が、続く行動・判断に影響する現象です。

例として、アメリカで行われた次のような実験があります。

2つのグループに、複数の単語を与え、その中から4つの単語からなる文章を作るように指示しました。

そして、その課題の後、被験者たちは別の実験場所へと移動させられたのですが、その際に面白い影響が見られました。

この実験の鍵は、2つのグループに与えた単語にあります。

一方には、

・フロリダ(注:定年した方が多く住む地)
・忘れっぽい
・ハゲ
・白髪
・シワ

などの単語を入れておき、もう一方のグループには対照実験として、このような単語は入れませんでした。

するとどうなったか?

これらの老人をイメージさせる単語を見た被験者たちは、次の実験への移動の歩行速度が遅くなるという結果が得られたのです。

「老人」という単語は入っていなかったにも関わらず。

このように、先行する入力が後に続く行動・判断に影響することをプライミングと呼びます。

なぜプライミングが起こるのか?

この理由を、上でお話ししたメカニズムは説明できると考えています。

というのも、「忘れっぽい」「白髪」「シワ」などの言葉の意味は、老人が現れる状況から推測している筈だからです。

したがって、これらの単語の意味を「理解」する過程で、自然と老人をイメージしてしまいます。

そして、そのイメージが「ゆっくり歩く」という行動として現れたと考えられます。

(認識と行動が相互に影響し合うことが知られています。

この点はまた今度お話ししましょう。)

以上より、1つの言葉・アイデアが入力されると、そのアイデアと繋がった複数のアイデアが刺激されることがわかります。

ちょうど、静かな水面に石を落とすと、石が落ちた点(=入力されたアイデア)から、隣接した位置(=繋がったアイデア)まで波が広がるように。

(アイデアのネットワークと言っても良いかもしれません。)

そして、私たちはそのネットワークから意味を推測します。

このメカニズムを理解すると、効果的な言葉の紡ぎ方が見えてきます。

つまり、まずは相手がどのようなネットワークを持っているのかを理解すること。

その上で、(そのネットワークの中で)狙った効果を与えられるアイデア・言葉を投げ掛けてあげれば良いということになります。

相手のネットワークを理解する作業は他でもなくリサーチなので、今回の話からもリサーチの重要性を理解して頂けるのではないでしょうか。

リサーチによって、「各言葉・アイデアがどのようなアイデアと結び付いているのか」まで考慮できるようになれば、小手先のテクニックだけ使っていた頃より格段に精度が増すはずです。

今回のメールは長くなってきたので、他の応用法などについてはまた別の機会に書きましょう。

P.S. 今回お話しした考察の背後には、物理学の方法があります。

物理では、実験をし、結果が得られると、それを説明する理論を構築します。

そして、その理論を検証するような実験をすることで、理論(仮定)の精度を上げてきました。

つまり、優れた理論は1つの結果だけでなく、様々な現象を説明できます。

同様に、プライミングなどの実験結果を説明できる理論を考える中で、今回お話ししたアイデアのネットワークという仮定に到達しました。

今回は1つの現象しか話せませんでしたが、プライミング以外にも複数の実験結果を説明できる考えなので、大きくは間違っていないと(現時点では)考えています。

P.P.S. 今回お話しした実験以外にもプライミングにご興味がありましたら、ノーベル経済学賞も受賞した著者の本をお勧めします。

プライミング以外にも、システム1,2などについて、第一人者の詳しい解説が読めます。

最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

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