Appleのロゴに隠された秘密に学ぶ、ヒットのデザイン法

From:Dr.kappa
木曜日、午後11時56分
日本、本州

(これは、2020年11月6日に送信した私のメルマガを一部編集したものです。)

最も「美しい」形は何かご存知ですか?

「美しい」と言っても色々な解釈がありますので、ここでは「対称性が高い」と言い換えましょう。

このように問題を翻訳すると、実は数学的解答を与えることができます。

答えを言ってしまうと、それは球です。

少し脇道に逸れますが、この事実を理解する為に簡単に補足しておきます。

ここで「対称性」というのは、ある変換のことで、特に元の形状を保つもののことを言います。

例として、正方形を考えてみましょう。

この図形を(その中心周りに)90度回転させても元の形に戻ります。

したがって、90度回転は正方形の対称性(の1つ)になっています。

また、向かい合った辺の中心を貫く軸で折り返す変換も対称性です。

最後に、向かい合った頂点を貫く軸で折り返す変換も図形の形を変えない為、対称性になっています。

これらが正方形の対称性。

では、今度は球を考えてみましょう。

すると、正方形と異なり、どんな角度で(球の中心周りに)回転させても形が変わりません。

したがって、回転対称性だけで正方形の場合よりずっと多く(無限個)の操作を持ちます。

更に、中心を貫くどんな直線で折り返しても、球は形が変わりません。

よって、折り返す対称性も無限個持っています。

以上より、球は膨大な対称性(この場合、球の形を変えない操作)を持ちます。

つまり、我々人類が、なんとなく球を美しく感じるのは、この形状が高い対称性を持っているからだ、と数学的に考えることができます。

(ちなみに、もう1つ脇道に逸れますと、この対称性という概念は物理学で中心的役割を果たします。)

本題に戻ります。

美しい形として他にも有名なものがあります。

それは今回のメールのタイトルにした、Appleのロゴです。

このロゴを美しいと感じる方が少なくありません。

それはなぜか?

やはり数学的理由が隠れているのでしょうか?

正解です。

実は、このロゴには黄金比が隠れていることが発見されました。

(例えば次の記事参照:

https://creators.view.cafe/122/)

黄金比も名前からして美しそうですよね。

これは正五角形の1辺と対角線の長さの比のこと。

具体的には1:(1+√5)/2という比です。

(後者は数値的には約1.618。)

この比も人間は美しいと感じる傾向があります。

いにしえの芸術家たちはこの事実を知っていました。

その為、有名な芸術作品には黄金比が利用されているものが多い。

例えばモナ・リザ。

彼女の顔の横幅:縦幅は黄金比になっています。

あるいはミロのヴィーナス。

(足元からへそ):(足元から頭頂部の高さ)、また(へそから肩):(へそから頭頂部の高さ)はどちらも黄金比でデザインされています。

(他の例にもご興味がありましたら例えば次の記事をご覧ください:

https://style.nikkei.com/article/DGXNASFK2602O_W3A720C1000000/)

以上のように、我々が美しい、心地良いと感じるものには「調和」が隠れている場合が少なくありません。

(隠れた調和を見つけることは数学の得意とするところです。

数学的調和に人間が影響を受けていると言っても良いでしょう。)

この絶妙な調和を含んでいるからでしょうか。

Appleのロゴは先進的でありながら、どこか馴染み深い印象を受けます。

Apple製品がここまで人類に受け入れられる理由の一因はロゴに隠れた調和にあるのかもしれません。

さて。

ここで1つ思い出してください。

過去のメルマガで何度か話していますが、人間は購入という行動をまずは感情的に判断します。

最初の数秒程度で。

そして、残りの時間ではその判断が正しかったのか否か、論理的に正当化を行なっていると(脳科学などで)明らかになってきています。

例えば私のようなコピーライターが書くセールスレター。

この場合、冒頭のヘッドラインを見た瞬間に読者は購入するか否かを判断し、レター本文を読んでいる数分の間にその判断を理性的に正当化していると考えられています。

では、次のように考えられないでしょうか?

美しさという我々の感性が数学的調和に影響を受けるのならば、感性(感情)で決心する購入という人間の行動も調和を実現することで最大化されないか?と。

この「予想」は、実は膨大な事例の研究から正しいと考えられています。

私がこの研究について知ったきっかけは、次のTED講演です:

講演者デレク・トンプソンは、どんな2つの要素の調和がヒットを生むかを解説しています。

それらの2つの要素とは、先進性となじみ深さ。

この2つの要素は一見矛盾します。

なぜなら、先進的なものは原理的に新しく、経験したことの無いものだから。

この先進性はコピーライティングの言葉ではニュース性と言っても良い。

実際、上の動画の中でデレクはこのように語っています:

「人々はnewという言葉に惹かれる」。

コピーライティングの統計も彼の主張を支持しています:

具体的には、ニュース性を入れたところ、22%多く思い出された(想起された)というデータがあります。

(確かに、想起と購入の関係については議論の余地が残ります。

ですが、思い出せたということは、少なくとも読者の印象に残ったということ。

ということは少なくとも読まれたことを意味しますので、ある程度は効果的になったと考えて良いでしょう。)

先進性、あるいはニュース性。

この要素を入れると効果的な広告になるならば、完全に先進的で、全く馴染みないものにしたらどうなるでしょうか?

実は、このような打ち出し方をすると、先進性を入れているにも関わらず、結果が悪化するというデータが出ています。

(それらの統計もデレクは講演の中で話してくれています。)

では、どうしたら結果の最大化をできるでしょうか?

デレクが発見した答えは、なじみ深さも混ぜること。

つまり、先進的でありながら、どこか受け入れやすいもの。

このような絶妙な調和を実現することで、結果が最大になっていることを発見したのです。

先進的でありながら受け入れられることをデレクはMost Advanced Yet Acceptableの頭文字を取ってMAYAと呼んでいます。

つまり、MAYAを実現した時、結果が最大化されるということ。

なぜそう言い切れるのか?

彼は講演の中でも多くの例を挙げています。

例えば

・Spotify(音楽サービス)
・論文の研究テーマ
・ファッションの流行
・名前の流行
・政治
・NASAの宇宙船

ここまで理解すると、なぜAppleのロゴやApple製品が多くの方々に受け入れられるのか、新たな視点から見ることができます。

つまり、先進的なデザインや商品でありながら、どこか馴染み深さも感じるから。

例えば、iPhoneは先進的な製品でしたが、角の丸い形状や丸いボタンなど、どこかなじみ深さも混じったデザインでした。

上で挙げたNASAの宇宙船も、先進性の象徴と言える物でありながら、丸みなどを帯びており、なじみ深さもある形状をしています。

このようにヒットした事柄を調べていくと、MAYAが実現されているとデレクは発見したのです。

理論的にはこれで良い。

だが、実際にヒットを生みたい場合、どうすれば良いでしょうか?

デレクはそのヒントも与えてくれています。

というのも、彼がMAYA理論に到達したのはレイモンド・ローウィの仕事を調べたからでした。

レイモンドは口紅から機関車まで、ありとあらゆるものをデザインしており、ヒットを膨大に生んでおります。

では、レイモンドはどのようにデザインしていたのか?

簡単に言えば、リサーチをしていたようです。

やはり、ここに帰ってきますね。

つまり、

・人々が何を欲しており、
・何に気付いておらず、
・どのような価値観を持っているのか。

これらのことをリサーチによって炙り出すことによって、彼らにとって先進的でありながら、なじみ深さも感じてもらえる絶妙な調和をデザインすることが狙えます。

なお、MAYAを実現する為のより詳細な指針にご興味がありましたら、彼の書籍「ヒットの設計図–ポケモンGOからトランプ現象まで」で学ぶことができます:

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歴史的に膨大な事例で実証されているMAYAを実現することで結果の最大化を図りましょう。



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