この判断を誤ると10日間の努力も水の泡に

From:Dr.kappa
木曜日、午後6時19分
日本、本州

(これは、2020年9月25日に送信した私のメルマガを一部編集したものです。)

前回のメールでは、良い文章(の半分)についてお話ししました。

つまり、説得力を持つアイデア=ビッグアイデアの解説でした。

(説得力を持っていれば正しいか否かは問いません。)

ビッグアイデアとは、たった数言でアイデアの売り込みが終了してしまうようなもの。

アハ体験を伴うものでした。

前のメールで挙げた具体例には次のようなものがあります:

・お子さんの命に100円の価値がありますか?
・毎日でも排水口を除菌できる洗剤(P&G出身の石井さんの例)

(読み逃した場合はこちらからご覧いただけます:

「お子さんの命に100円の価値がありますか?」
https://ownstyle.info/archives/132

これらはこの数言だけで鋭く感情に訴え、語り手が狙った影響はこの数文字だけで既にほとんど与え終わっています。

したがって、相手を説得する仕事はほとんど終わったも同然です。

それ故、説得のために残りの時間ですべきことはあと1つしかありません。

その1つのことを達成する為に良い文章のもう半分が関連して来ます。

(厳密には、説得力を持つアイデアを冒頭で打ち出す際にも重要な役割を果たしますが。)

ですが、その残りの半分をお話しする前に、折角見つけたビッグアイデアを有効活用する方法についてお話ししたいと思います。

というのも、ある判断を誤ると、せっかく時間や労力を掛けて見つけた説得力を持つアイデアが無駄になってしまい兼ねないからです。

(良い文章の残りの半分については次回のメールでお話しします。)

この事実を理解するために、つい先日、私が経験したことをお話しさせてください。

1週間ほど前、2020年9月19日のこと。

ある場所へ行きました。

そこは原理的に売り込まれる場所だとだけお伝えしておきます。

詳細は書けませんが、単価は数10万円から100万円以上のものまで。

したがって、男性であれば車のディーラー、女性であればジュエリーショップをイメージして頂ければ想像しやすいと思います。

そんな、安くない単価の商品を売り込まれる場所へ出掛けました。

場所柄、当然、担当者の方は売り込みを行なって来ます。

ですが、多くの成約を取るセールスパーソンがいれば、あまり成約できない方がいらっしゃるのも事実です。

19日に担当して下さった方はどうだったかと言いますと…

最初は雑談のような会話だったのですが、話し始めて5分くらいした頃でしょうか。

かなり早い段階で複数あるオファーの話になりました。

しかも最も高価なプランを心なしか押している姿勢まで見えてしまいました。

おそらく、誰しも一度はこのような経験をしたことがあると思います。

このような状況に接すると、我々は買う気が冷める傾向があります。

例えば、買う気もないけどなんとなく服屋に入り、服を見ていたら、いきなり店員さんが寄って来て「この商品は〜」と話し掛けられるようなものです。

おそらく、このような状況で面倒になって店を出た経験が一度はあるのではないでしょうか?

あるいは、YouTubeを見ていて、広告が流れて来たら、私たちは飛ばす傾向を持っています。

(飛ばせるのに全ての広告を最後まで見る方がいらっしゃいますか?)

更に、明らかに売り込みとわかるメールが届いたら、開けずに捨てることさえあります。

つまり、人間は売り込みを嫌う傾向を持っています。

このような売り込みを感じさせてしまうものを私は「売り込み臭」と呼んでいます。

そして、人間は売り込みを嫌うため、売り込み臭を嗅ぎ取った瞬間に避ける傾向があるということです。

19日の私はまさにそうでした。

高価なプランを売ろうとしている姿勢に売り込み臭を感じ、その瞬間からサーっと買う気が失せました。

それ以降はしたがって「あー、売り込もうとしているなぁ」という言葉・仕草ばかり目についてしまいました。

服屋やYouTube、セールスメールを避ける傾向も、私たちはそこに売り込み臭を嗅ぎ取るからと説明できます。

この傾向は誰しも経験したことはあるのですが、一転、売る側になった瞬間に売りたいという気持ちが勝って売り込み臭がプンプンと漂うトークや文章を書いてしまいがちです。

私自身、言葉の研究を始め、言葉の1つ1つが相手に与える影響を観察・分析し始めるまではこのようなミスを犯してしまっていました。

これはある意味仕方のない部分でもあります。

というのも、巷のコピーライティングの書籍などでも売り込み臭を説明したものは見たことが無いからです。

(唯一発見したのは、コピーライターを養成するAWAIというアメリカの組織のブログの中だけです。

その組織には世界のトップレベルのコピーライターたちが指導者として参加しているので、私が気付くような点は当然彼らも認識できるのだと考えられます。)

私自身は売り込み臭を消すべきだということを発見してから、セールスレターの中で意識するようになりました。

その結果、冒頭での離脱が減り、成約率を高めてくれるという結果に繋がりました。

(この教訓は「成約率を上げる10の方法」の中でも解説しています:)

売り込み臭を消すことの強力さを実感してからは、セールスレターを書く際には必ず冒頭での売り込み臭を消すように意識していました。

そして、その結果として良い数字が出ていました。

あるレターまでは…

そのレターも依頼を受けて書いたものでした。

元の販売ページでは冒頭から商品の話をしている、典型的な売り込み臭が出るコピーでした。

そこで、私はいつものように売り込み臭を消したレターを納品しました。

クライアントも是非試したいと言ってくれ、私の書いたコピーを忠実に再現した販売ページを作成してくれました。

(私は基本的にはコピーの執筆のみを行なっており、コーディングはクライアント側に任せています。

あるいは、WordPressであればいじれるので、追加のサービスとしてWordPressでの完成形を納品するというオファーも提供しています。)

売り込み臭も消え、しかも前回のメールで解説したビッグアイデアも(少なくとも私の中で)見つかっていたので、利益が2倍にはなるだろうと(ざっくりと)予想していました。

結果はどうだったでしょうか?

利益は確かに増加しました。

ですが、2倍には届かず、1.26倍止まりでした。

私の予想は外れました。

なぜ思ったほど成約が増えなかったのか?

私は暫くその理由が理解できませんでした。

ただ、約1ヶ月後。

遂に理由がわかりました。

その理由が今回のメールでお話ししたいことです。

上に書いた私の経験からご理解いただけるように、10日間もの時間と労力を掛けてリサーチを行い、ビッグアイデアを見つけても、この判断を誤るとその努力が水の泡になり兼ねません。

(私の場合は利益が増加したのでまだ良かったのですが。)

したがって、この点を正しく判断することは、リサーチとその結果のビッグアイデアを殺してしまわない為に重要です。

では、その点とは何か?

先に答えを書いてしまうと、Awareness(認知度)と呼ばれる概念です。

この概念はコピーライターGene Schwartzによって提唱されました。

彼は、見込み客が商品や販売者についてどれだけ知っているかを5段階に分けました。

その5段階は次の5つです:

既に商品を知っており、しかも購入を検討しているようであればmost-aware(認知度が最も高い)。

購入の検討はしていないが商品は知っている状態であればproduct-aware(商品の認知)。

具体的な商品は知らないが痛みの解決法は知っているのであればsolution-aware(解決法認知)。

痛みに気付いているだけの状態であればproblem-aware(問題認知)。

最後に、問題にさえ気付いていない状態であればunaware(不認知)。

見込み客の認知度をSchwartzはこの5段階に分類しました。

上でお話ししたレターで私が犯してしまったミスをお話しする前に、この概念をより深く理解する為に、具体例を考えてみたいと思います。

ここではわかりやすいダイエット商品を考えてみましょう。

見込み客が自分は太っていると感じていない場合、unaware。

太っていると気付いていればproblem-aware。

太っているという問題の解決法、つまりダイエット法を知っていればsolution-aware。

そのダイエット法を実現する商品を知っていればproduct-aware。

最後にその商品の購入を検討していればmost-awareとなります。

そして、母数としては認知度の低い(つまりunaware側)人が多く、認知度の高い側(つまりmost-aware側)へ行くほど人数が少なくなります。

Awarenessの理解が深まったところで、私が犯したミスの話に戻りましょう。

ミスというのは、私がAwarenessの判断を誤ったことです。

(正確には、そのレターを書いた当時はこの概念を知りませんでした。)

その為、上でお話ししたように、どのレターも売り込み臭を消して、商品から遠い場所から書いていました。

一般論として認知度の低い方が多いので、unaware側の方々へ向けて、商品の影さえ見せない部分から語り始めれば大抵の場合は外しません。

ですが、認知度の高い見込み客相手の場合はこれは誤りとなります。

そして、思うほど利益が伸びなかったレターで販売していた商品は、既に数年間にわたって2億円以上売っており、商品の認知度は高いものでした。

つまり、販売ページにアクセスして来た方々の認知度は高かったと考えられるということです。

認知度の高い方へ向けて商品の影が見えない部分から語り始めるとどうなるでしょうか?

確かに売り込み臭は消えます。

ですが、「あれ?ページ間違えたかな?」などと思われて離脱され兼ねません。

要するに、一般的には売り込み臭を消すべきなのですが、(人数の少ない)認知度の高い方々がアクセスしてくると考えられる場合には早めに商品を見せた方が良いということです。

認知度の高い商品としてはどのようなものがあるでしょうか?

最近、新モデルが発表されたiPadを見てみましょう。

iPad
Explore the world of iPad. Featuring the all-new iPad Pro, the redesigned iPad Air, iPad, and iPad mini.

Appleはこのメルマガでも何度も登場していますが、カルトとさえ呼ばれる熱狂的なファンが多く、新商品が出る度に買う方も少なくありません。

言い換えるなら、認知度の高い見込み客が多いということです。

彼らは既にAppleという会社を信頼(忠誠?)しており、しかも商品についても知っています。

ですので、典型的なmost-awareの状態となります。

それ故、彼らに対しては売り込み臭を消す為に商品の影を消すのではなく、寧ろ最初から価格などを見せた方が良いという判断になります。

上のAppleのサイトをご覧いただくとわかりますが、実際に最初のページから価格が明記されています。

したがって、彼らはAwarenessを正しく判断し、適切なコピーを打ち出しているということを確認していただけます。

この具体例も交えてAwarenessを深く理解すると、なぜ私のレターが思うような結果を出せなかったのかも直ちに理解することができます。

Awarenessの判断を誤り、商品や価格を見せるのが遅れたから。

以上の私の経験から得られる教訓は、見込み客のAwarenessを正しく把握することが重要だということです。

この部分を誤ると思ったほどの数字が出ず、折角のリサーチやビッグアイデアを活かし切れないという残念な結果になってしまうかもしれません。

では、どうやって正しくAwarenessを把握すれば良いでしょうか?

実は、これもリサーチで行うことです。

つまり、見込み客の感情や言葉を理解する中で、

・彼らは問題に気付いているのか?
・解決方法は知っているか?
・商品や提供者を認識しているか?

を理解することを目指します。

以上より、今回お話しした点も含め、相手に効果的に影響を与えるには、次の6点をリサーチで明らかにすべきだと言えます:

・支配的感情
・信じていること(Belief)
・願望(Desire)
・感じていること(Feeling)
・core complex
・Awareness

リサーチを通してこれらの6点が明らかになれば、その情報を用いて効果的な言葉を紡ぐことができます。

良い文章の残りの半分の話を次回に回したのは、前回に続き、リサーチの話をしたかったからです。

今回のメールでリサーチについての話が一通り終わったので、次回は良い文章の残りの半分について解説します。



最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

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