お子さんの命に100円の価値がありますか?

From:Dr.kappa
木曜日、午後6時13分
日本、本州

(これは、2020年9月11日に送信した私のメルマガを一部編集したものです。)

これはブレーキ修理の広告の冒頭の1文。

この文章を読んだ瞬間、(私がそうだったように)ブレーキの点検をしてもらおうと感じる方が少なくないと思います。

なぜなら、子供の命はお金には換えられないほど大事なものだから。

したがって、この広告の1文を目にした方々は、その瞬間に既に売り込まれてしまっているということです。

言い換えるなら、この広告を打った企業の目的はほぼこの1文で達成されています。

実際、この広告は非常に成功し、大きな売上に貢献しました。

このように、人に刺さる言葉というのは、最初の一瞬で勝負が決まります。

この話は以前、『「正しい」影響の与え方』の中でも書きましたね。

(「正しい」影響の与え方はこちら:)

早い判断は脳科学でシステム1と呼ばれ、主に感情が司っています。

そして、感情的に下した判断をシステム2と呼ばれる遅い判断、主に論理を使った思考で正当化します。

この傾向は脳科学だけでなく、詳細な統計としても出ています。

ある調査によると、購入の意思決定の73%は広告の冒頭(ヘッドライン)で決まるというデータが報告されています。

ヘッドラインだけで論理的に説得されたと考えるのは難しいので、まずは感情的に購入する気になり、その判断が正当か否かを後から論理を使って判断していると考えられます。

感情→論理。

この人間の反応に則った言葉を紡ぐには、ヘッドライン(や最初の数言)で相手の感情に訴える必要があります。

そして、そんな言葉の成功例が今回のメールの件名にしたものです。

このように、ほんの数文字で相手に影響を与えてしまうような大きな力を持つ考えを、コピーライティングの世界ではビッグアイデアと呼びます。

そして、前回のメールの最後に書いたように、このビッグアイデアが、刺さる言葉の骨格を与えます。

(なお、ここまでコピーライティングの観点で書いてきましたが、このようにビッグアイデアが見つかれば一瞬で相手に影響を与えることができます。

したがって、ビッグアイデアを含んだ商品を開発すれば大きな売上が上がると期待されます。

なぜなら、その商品を知った瞬間、既にセールスはほとんど終わっているから。

また、上司、部下、恋人、親、友達などを説得したい場合も、ビッグアイデアをもって説得に当たれば、最初の数言で既に仕事はほとんど終わってしまいます。

それ故、コピーライティングだけでなく、より一般的に人に影響を与える上でビッグアイデアは重要です。

あるいは、以前ビッグアイデアについてお話しした時のように、思考自身の明確化にも役立ちます。

そこでは理論物理学でも使われる数学のビッグアイデアを例にお話ししました。

(言葉の使用上、最も重要なこと:)

言い換えるなら、思考が明確でないモヤモヤした状態というのは、まだビッグアイデアが見つかっていないから起こる現象です。

ビッグアイデアが見つかれば、アハ体験を伴い、「ひらめきを得た」という感覚を体験します。

そして、その瞬間、今までのモヤモヤが霧散する。

私は本業では理論物理学者をしていますので、研究の過程で何度もこのような経験をしてきました。

つまり、ビッグアイデアを見つけることは、広告や説得だけでなく、思考自身、あるいは判断も含めた言葉の使用上、最も重要と言っても過言ではありません。

(それ故、ビッグアイデアについて解説したメールのタイトルは「言葉の使用上、最も重要なこと」としました。)

では、そんなビッグアイデアはどうやって見つければ良いのか?

ビッグアイデアとはどのようなものなのか?

今回はこの点をお話ししたいと思います。

ただし、思考や判断まで含めた広い話とすると収拾が付かなくなるので、今回は冒頭の話、つまりコピーライティングやビジネスにおけるビッグアイデアについて書かせてください。

いきなり答えから入ります。

ビッグアイデアの構成要素は(私の現時点での理解で)次の3つです:

1.ターゲット
2.ターゲットのcore complex
3.promise

順番に説明します。

最初のターゲットというのはわかりやすいと思います。

見込み客として想定している相手のことです。

あるいは、説得と考えるなら説得相手のこと。

どのターゲットを狙っているのかをまずは明確にする必要があります。

そして次のcore complex。

これは日本語だと「核となる痛み」などとなるでしょうか。

1.で明確にしたターゲットの支配的感情、信じていること(Belief)、願望(Desire)、感じていること(Feeling)などを調べていくことで核となる痛みをあぶり出します。

どういうこと?と思われるかもしれません。

そこで、いくつか具体底を見てみましょう。

まずは今回のメールの件名。

これはシートベルトの修理を売る広告です。

したがって、ターゲットは運転手。

そこで、この広告を打った企業は恐らく運転手たちに取材していったのでしょう。

その結果、事故によって家族の命を失うことが最も辛いと浮かび上がったのだと推測します。

それ故、core complexは家族を事故で失うこととなり、ブレーキ会社はこの感情を狙いました。

特に、痛みの大きい子供の死を狙った結果、「お子さんの命に100円の価値がありますか?」という強く感情に訴えるヘッドラインが出来上がりました。

もう1つ例を見てみましょう。

これは先日読んだ記事に載っていたもの。

(元の記事はこちら:

【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書)

【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書|石井賢介(MD代表)
2020年5月末でP&Gのブランドマネージャーを退職しました。僕はこのNOTEで、P&Gで非言語的に受け継がれているマーケティングの思考法を、分かりやすい教科書のようにまとめようと思います。本気で読めば1時間かからず読めると思います。が、ちゃんと理解すれば知識レベルとしては本何冊分にもなることをお約束します。さらには、...

記事を書いたのはP&Gで働いていらっしゃった石井さん。

この記事の中で彼が触れている事例が正にビッグアイデアの発見になっています。

彼らが台所用洗剤の消費者たちを調査していたところ、排水口が外されて外に出されている場面に遭遇したそうです。

そこで、石井さんが深掘りして行くと、漂白剤は強すぎるので頻繁に使うのは肌・健康に悪いイメージがある」ことが判明したと書かれています。

つまり、毎日のように排水口を除菌したいけど、漂白剤は強すぎるから抵抗があるという葛藤がこの場合のcore complexでした。

そして、core complexが明らかになったら、その痛みを解消するという約束(promise)にどのようなものがあるか考えます。

以上の3点、ターゲット、core complex、そしてpromise。

これらがビッグアイデアの骨格となります。

そして、ビッグアイデアが見つかると、既に思考はクリアになっているので、訴えるべきことも明瞭で、言葉は自然と紡がれます。

2つ目の例の石井さんのケースが良い事例です。

彼は消費者の葛藤に気付いてからそのcore complexへ訴えるCMを打つまでは早かったとおっしゃっています。

彼らの洗剤は除菌に効果があることを検証し、それをCMで訴えたと言います。

正にcore complexを解消するというpromiseになっています。

(厳密には安全であることも言って初めてcore complexに向けた言葉となりますが、少なくとも記事の中には書かれていないようでした。)

そして、「新たな消費者の獲得へとつながりました」と書かれているので、このビッグアイデアに則って構成された言葉が刺さり、購入した方々が少なくなかったことがわかります。

以上より、コピーライティングやビジネス、説得においては1.ターゲット、2.そのcore complex、3.そこへ向けたpromiseの3点がビッグアイデアの骨格となります。

では、これらの3点はどうやって見つければ良いでしょうか?

最初のターゲットはある意味簡単で、ある意味難しい部分です。

コピーライティングや説得など、既に相手が決まっている場合は簡単ですが、企業が新たな商品を開発しようとしている際には膨大な人数の中からある程度的を絞らなければならないからです。

下手をすると勘頼りになります。

構成的な方法の1つとしては以前お話ししたような市場規模を見るのが一手です。

ターゲットが明らかになったら次はcore complexを同定する必要があります。

その為には上に書いた支配的感情、信じていること(Belief)、願望(Desire)、感じていること(Feeling)などを明らかにしていきます。

(後半の3つはまとめてBDF公式とコピーライティングでは呼ばれます。)

そして、これらを明らかにするには、前回お話ししたリサーチを行うしかありません。

推測だとほぼ必ず外します。

例として、石井さんの洗剤の例を再度取り上げさせて頂くと、販売者として消費者が洗剤に求めているものとしては洗浄くらいしか浮かばないでしょう。

そこで、汚れが落ちるというようなメッセージを打ち出しても、そんな言葉はどの洗剤も使っており、ターゲットには全く刺さりません。

刺さらないというのはビッグアイデアが無い証拠、今の場合core complexが同定できていない証拠です。

(私は職業柄、多くのセールスレターを見てきましたが、パッと見た瞬間に何とも思わないレターがほとんどです。

99%以上かもしれません。

それらのコピーに欠けているもの、それがビッグアイデアです。

今回のメールの件名にしたような、見た瞬間に感情を動かされるような大きな力を持った言葉を見つけない限り、小手先のテクニックを使っても苦戦するのがオチです。

逆に、ビッグアイデアさえ見つかれば、打ち出すべきことは既に明確になっている為、言葉は自ずと紡がれます。

ちょうど石井さんの例のように。)

長くなったのでまとめます。

人に影響を与える為、また思考や認識もクリアにする為に重要なのがビッグアイデア。

その骨格を与えるのは(説得の場合)1.ターゲット、2.そのcore complex、3.promiseの3点です。

そして、core complexを明らかにするには、支配的感情、信じていること(Belief)、願望(Desire)、感じていること(Feeling)などを明らかにする必要があります。

これらを明らかにする作業が他でもなくリサーチです。

前回のメールのテーマでしたね。

以上より、刺さる言葉はリサーチから始まることがご理解頂けるかと思います。

勝手に売れる商品はリサーチ無くしてはまず作れません。

説得はリサーチから。

P.S. 以前からご紹介している私のサークルのメンバーが(非公開メンバー含め)4名になりました。

日々の訓練にも皆さん参加してくださり、私も刺激を受けています。

なお、サークルからの売り上げは100%、子供達の命を助ける為に使用させて頂いております。

具体的には、ユニセフのマンスリーサポートとして募金させて頂いております。

これは今までにご縁を頂いたクライアントやお世話になった方々への恩返しの為です。

ありがとうございます。



最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

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