【構造解説】なぜ売れるコピーは4つの要素を持つのか?

From:Dr.kappa
木曜日、午後7時34分
日本、本州

1万円って安いですか?

ほぼ間違いなく、「高い」と感じたと思います。

では、なぜ我々は1万円を「高価だ」と感じやすいのでしょうか?

今回はこの理由を解説したいと思います。

簡単に言えば、普段の数100円程度の買い物と比較しているからです。

比較なので、比較対象を適切に選べば、同じ1万円でも「安く」感じることも可能。

実際に試してみましょう。

1万円と言った商品は実は都内の一軒家でした。

家賃ではなく購入代金です。

中古ではなく新築で、なんのいわくも付いていない物件だとしたら?

このような文脈を設定すると、今度は「安い」と感じたのでは無いかと思います。

しかも破格で「安く」、タダ同然で、今すぐ買いたくなるほど「安価だ」と感じたのでは無いでしょうか。

というのも、都内の新築戸建ての相場は数1000万円だから。

したがって、比較対象がずっと高価になったため、相対的に元々考えていた1万円は「安く」見え始めます。

同じ1万円にも関わらず。

何が言いたいのか?

分析哲学などで、全ての価値は相対的だということが知られています。

言い換えると、「絶対的な価値」は存在しないということです。

お金も例外ではありません。

金額の場合は10000という絶対的な数字として表されているように感じがちですが、この「価値」が高いか安いかは相対的です。

(より厳密には、お金は単なる数ではなく、単位を持っています。

円、ドル、ユーロなど。

外貨と交換する際には単位の変換が必要なのがその証拠です。

相対的な価値の話に戻ります。)

実際、上で体験して頂いたように、比較対象によって「高い」とも「安い」とも感じることができます。

分析哲学に触れたのは、実はもう少し深い理由があります。

そもそも、「高い」という言葉、概念自体が相対的です。

なぜだか分かりますか?

「高い」という言葉、概念は「安い」という対となる言葉があって始めて意味を持つからです。

わかりにくければ、こんな状況を想像してください。

全ての商品・サービスが1万円の世界を。

もし、あなたがこんな世界にいたとしたら、金額が「高い」「安い」という言葉には意味が無くなります。

したがって、この世界にはそもそも「高い」「安い」という概念さえ存在しません。

つまり、これらの概念が存在するためには、前提として比較対象が必要だということです。

標語的に書くと、「高い」「安い」という言葉自体が比較対象を要求しています。

少し難しい話が続きました。

もう少し身近な例で考えてみましょう。

今度は長さを考えます。

400kmは長いと感じますか?

これは東京-大阪間の大体の距離ですが、恐らく「長い」と感じたと思います。

普段の数km程度の移動と比べているからです。

ですが、私の友人で天文学を研究している者たちに言わせれば、無視できるほど「短い」となります。

なぜなら、彼らは普段、地球と太陽間の距離(天文単位と呼ばれます)を基準としているから。

(ちなみにこの長さは約1億5000万kmです。

したがって、400kmなど、基準の0.0003%ほどに過ぎず、無視できます。)

普段の生活では基準はあまり意識されませんが、物理学では注意を払います。

上でお話ししたように、基準の取り方によって大小が変わってきますので、ある量が大きいか小さいかは基準の取り方に依るからです。

(なぜ物理学では基準を気にするのか、脇道に逸れますがついでに解説してみましょう。

興味が無ければ括弧の終わりまで読み飛ばしてください。

では補足です。

物理学では厳密に解ける問題は多くありません。

したがって、ほとんどの場合は近似(きんじ)を行います。

近似という言葉に馴染みが無ければ、次のような例を考えてください。

1.01を2乗すると1.0201となります。

もし、小さな誤差には興味が無く、0.01の位までだけ分かれば良いのであれば、この数を約1.02と考えることができます。

このように、厳密な答えからの小さな誤差を無視することを近似と言います。

近似と言っても、どの位で四捨五入するのかでいくつかの方法が考えられます。

例えば、0.1の位で切るのか、それとも0.001の位まで考えるのか、など。

したがって、近似をする際には必ず、どの位まで残したのか、を明言しなければなりません。

そして、物理で扱う量には大抵の場合、mやkgなどの単位が付いていますので、適切な基準を持ってきて単位の無いただの数字にし、その上でどの位まで残すのかを議論します。

それ故、物理学では基準の取り方が近似の仕方に直結し、非常に重要となります。

補足は以上です。

本題に戻ります。)

東京-大阪間の距離を無視できるのか否かは、この基準の取り方、どの視点に立つかに依ります。

それ故、少なくとも私たち物理学者は常に基準を意識します。

物理学者だけではありません。

私が副業として行なっている、コピーライティングでも常に意識すべきです。

なぜなら、セールスコピーというのは、乱暴に言えば、商品の価値が価格以上だと説得する文章だから。

セールスレターに限らず、説得的な言葉は全て原理は同じです。

・異性をデートに誘いたい場合
・会社で企画を通したい場合
・研究論文を雑誌に通したい場合

どれも相手に対して、提案を飲むことの方が却下するよりも価値があると感じてもらえれば(原理的に)説得は成功します。

したがって、説得においては、如何に価値を演出するか?が主な問題点になります。

その為に有効なのが、冒頭からお話ししている比較を用いること。

基準を適切に設定することにより、語り手が望むような「価値」を相手に感じてもらえれば、高い確率で購入などの行動を取ってもらえると期待されます。

なお、ここまでは2つの対象の比較だけを考えてきましたが、対象は2つとは限りません。

複数の対象を考えることもできます。

例えば色。

色には膨大な対象があります。

赤、白、黒、などなど。

そして、これらも「価値」である以上、比較対象が存在することによって意味が立ち上がります。

例えばこの世界の物質が全て赤色だったら。

赤以外の色は存在しないため、そもそも「赤」という言葉を作る必要性さえありません。

つまり、赤という言葉・概念・価値は原理的に「赤以外」の存在を仮定することによって存在しているということです。

赤しか存在しない世界だと想像しにくいでしょうか?

では、このような実例ではどうでしょう。

日本語には雨を表現する様々な言葉があります。

・五月雨
・氷雨
・小糠雨

などなど。

一方、英語にはこれらの細かな違いに応じた表現は存在しません。

したがって、形容詞を使ってなんとか表現しています。

つまり、これらの形容詞を使わなかった場合、英語で単に雨と呼ばれる天気を、日本語では五月雨、氷雨、小糠雨、などと様々な異なる言葉で表現することになります。

我々が五月雨、氷雨、小糠雨などと比較する天気を、英語話者は区別することができません。

雨しか表現が無い英語の世界は、赤しか色が無い世界のようだということ。

「価値」「差」を立ち上がらせる比較・区別が無い為、「価値」「差」も消えます。

そもそも区別・比較が存在しないので、それらを分離する「価値」も存在しないということです。

価値は相対的。

この事実は原理的なものなので、その応用方法はいくつも考えられます。

今回はその1つだけお話ししましょう。

それが他でもなく、売れるコピーの構造です。

より一般化して、効果的な説得の方法と考えて頂いても構いません。

上で触れたように、説得というのは提案を飲むことの方が却下するよりも価値があると感じてもらえた時に成立します。

それ故、飲みたくなるだけの価値を感じてもらえば良いということになります。

どうやって価値を演出するのか?

それが比較を使うことです。

価値は比較によって立ち上がるのでした。

したがって、冒頭で比較を使うことにより、価値が鮮明になります。

説得という観点で考えると、着目すべき価値は2つしかありません。

それは痛みと快楽。

(お気付きのように、これらも対となる価値です。)

それ故、説得の最初にすべきことは限られます。

痛みを伴う状況と快楽を伴う状況を比較すること。

これだけです。

人間は痛みを避けるので、相手が(見ないようにしている)痛みを強く感じてもらうことができれば、その痛みから逃れる為に行動せざるを得ません。

1点コメントしておきます。

コピーライティングの書籍などでは、「相手が得られるベネフィットを冒頭で打ち出せ」と言われています。

この主張は間違いではありませんが、ベネフィットという快楽だけでは人は中々動きません。

快楽と痛み、どちらの方が強いかはプロスペクト理論の名で知られています。

結論は痛みの方が数倍強いと考えられています。

つまり、ベネフィット・快楽しか打ち出さないと、いくつものハンデを背負うことになるということです。

・比較が無い為、そもそも価値が鮮明ではない
・快楽の数倍のポテンシャルを秘めた痛みという価値を利用していない

したがって、冒頭でベネフィットを打ち出すのは良いのですが、より効果的にするには痛みとの比較という形で入れることです。

更に、痛みと快楽の時間的ズレも決定的です。

どういうことか?

説得において、相手が快楽を得られるのはいつでしょうか?

未来。

まだ経験していない将来です。

したがって、どんなに鮮明に快楽を得られると伝えても、どうしても臨場感が高まりません。

臨場感が湧かないと人は行動しません。

なぜなら、人の頭に入るのは言葉ではなく、言葉から湧き上がるイメージであり、このイメージによって行動するからです。

臨場感というのは、このイメージの鮮明さのこと。

つまり、未来の快楽を描いても、経験したことが無いことなので、どうしてもイメージが不鮮明になり、行動に踏み切らせることが難しくなります。

逆に、痛みの時制は現在です。

例を見てみましょう。

・ダイエット商品であれば、現在太っているという痛み
・副業での稼ぎ方を教える講座なら、現在あまり稼いでいないという痛み
・コピーライティングの教材なら、現在成約率が低いという痛み

を主に狙うことになります。

ご覧のように、痛みの場合は時制が現在、正に経験していることです。

それ故、痛みは未来の快楽と比べて臨場感が高くなる傾向があり、より強く行動を促すポテンシャルを秘めています。

以上の考察から、冒頭で痛みの描写をしないのは、本来発揮できたかもしれない何倍ものパワーを利用しないことになってしまいます。

そして、痛みの力を更に引き出すのが比較。

快楽との比較です。

つまり、冒頭は痛みと快楽の比較から始めると非常に強力なコピーになると考えられます。

売れるコピーで最も重要な部分の解説が終わったので、残りは簡単です。

ここ数回でお話しした効果的な構造を再掲しておきます:

1.比較
2.理由
3.理由を備えたものとして商品を提示
4.念押し

1については解説しました。

2の理由というのは、1で行った比較の痛みと快楽を分けたもののことです。

すぐ後で具体例を調べるので、その前に構造を最後まで見ておきましょう。

相手としては最初に強く痛み(と快楽)が喚起されます。

痛みと快楽の違いを生んでいるもの(理由)が2で説明されると、痛みから逃れる為に、その理由を手に入れたいと相手は欲し始めます。

そこで理由を備えたものとして商品を提示してあげれば、相手自身から欲してくれます。

最後に商品によって痛みから逃れられること、行動しても安全なことなどを念押ししてクロージングです。

これが、売れたレターを数10本分析した結果、私が発見した効果的な構造。

上の説明だけではイメージが湧かないかもしれません。

そこで、以下ではいくつかの具体例を見てみましょう。

まずは有名なウォール・ストリートジャーナル(WSJ)。

このセールスレターは2人の男の比較から始まります。

1人は小さな部署の課長、もう1人は社長です。

読者はこの比較により、前者の状態に痛み、後者の状態に快楽を感じます。

痛みと快楽の喚起をしたところで、WSJのレターは2人の違いが使える知識(=理由)の有無にあると伝えます。

そして、理由を備えたものとしてWSJを打ち出し、最後に冒頭の2人の男の物語に関連付けることで再び痛みと快楽を喚起して念押し、クロージング。

正に効果的な構造を備えています。

これだけでは偶然かもしれませんので、メルマガの無料プレゼントでお渡ししているレポートで分析した、約100万円の遠征のレターも調べてみましょう。

このレターの比較は何でしょうか?

注意深く読むと、遠征に参加する者vs参加しない者という比較(上で解説した比較そのもの)も読み取れますが、メインとなっている比較は別にあると考えています。

それは遠征に伴うデメリット(約100万円のコストや危険など)と得られるベネフィット(承認欲求を満たされる)の比較です。

このレターはかなりトリッキーなので、上で解説した比較(現状の痛みと未来の快楽)とは種類が異なります。

ですが、比較から始めていることには変わりありません。

デメリットも見せているのは、両面提示と呼ばれるテクニックで、語り手に対する信頼を勝ち取ることを狙っていると考えられます。

いずれにせよ、このレターではこの比較により快楽を鮮明にしています。

そして、遠征に参加するとなぜ快楽を得られるのか、理由を説明し、レターで販売している遠征にはそれらの理由が備わっていることを説明、最後に冒頭の痛みと快楽に再度触れて念押しし、クロージング。

比較対象は特殊でしたが、構造は解説した通りでした。

最後に、有名なピアノコピーも見てみましょう。

このレターは前回のメールで詳しめに解説したので、今回は簡単に済ませます。

(前回のメールはこちら:

https://ownstyle.info/archives/250

ピアノコピーの本文(リード)は主人公ではなく、アーサーという一流ピアニストの演奏が終わった場面から始まります。

アーサーは拍手喝采を受けている一方、主人公のジャックは嘲笑を受けています。

前者の状態が快楽、後者の状態が痛みです。

このレターで狙っている感情は、ピアノを弾けるようになったら満たされる承認欲求、未来の話で非常に臨場感が湧きにくいものです。

ただ、そこと比較した現在の痛みを描いているので、効果的に臨場感を上げることに成功しています。

レターではその後、ジャックが予想に反して圧巻の演奏を見せ、拍手喝采、賞賛の嵐を受けます。

痛みの状態から快楽の状態へ。

すると、どうやってジャックは弾けるようになったのか?と読者は理由を求めます。

ピアノコピーではこの問いを周囲の人たちに代弁させ、それに応える形でジャックに解説させます。

曰く、先生も要らず、短時間でピアノが弾けるようになる方法がある、と。

そんな方法として通信講座が紹介されます。

そして、最後に痛みと快楽に再び結び付けてクロージング。

典型的な効果的構造となっています。

これら3本以外にも、何本もの効果実証済みのセールスレターを分析しましたが、どれもこの構造

1.比較
2.理由
3.理由を備えたものとして商品を提示
4.念押し

を持っていることが確認できます。

唯一の違いは、それぞれの要素をより魅力的にするための「ひねり」が入っていること。

ひねりについてはまた解説します。

今回は上の構造が効果的であること、そして売れるレター、成功確率の高い説得を行うには、痛みと快楽の比較をどう作るか?から考え始めると良いという話でした。


P.S. この構造に気付いた時、誰か他にもこの秘密を知っているコピーライターがいないだろうかと思って、色々と本を調べてみました。

残念ながら?私が調べた限りは比較から始めると良いと解説している文献は見つかりませんでした。

(したがって、私の理論が間違っている可能性も無い訳ではありません。

何10本ものレターがこの構造を持っていることを確認しているので、完全に誤りである確率は限りなく0に近いですが。)

唯一近かったのが、総額1兆円以上売り上げたコピーライターの本です。

彼の名前はMark Morgan Ford(ペンネーム:Michael Masterson)。

アメリカでコピーライティングを教える組織AWAIを立ち上げた一人で、現在、英語圏で活躍しているコピーライター、マーケターに彼の教え子が少なくありません。

例えば

・Rich Schefren
・Paul Hollingshead
・Bob Bly

などなど。

日本ではあまり有名で無いかもしれませんが、アメリカだとトッププレーヤーとして有名な者たちです。

指導者でもある彼らに教えているため、Guru’s guru、先生の先生とも呼ばれています。

そのMichael Mastersonの書いた本には、比較については言及されていないものの、効果的な構造について、違った観点から解説してくれています。

(例えばFalse closeの有効性など。)

効果的な構造について、更に理解を深めたい場合はお勧めします。

https://amzn.to/2WmpNGp



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