なぜこの13文字は成約率を上げるのか?

From:Dr.kappa
月曜日、午後6時33分
自宅、ガラスのテーブルより

私は人間と言葉の研究をしています。

自分なりには真面目に取り組んでいるつもりです。

例えば。

天才と呼ばれるコピーライターGary Halbert。

彼が絶賛する広告9本は全て研究しました。

1文づつ。

(ちなみに、その1本は本メルマガにご登録頂いた際にプレゼントしたレポートで分析しているものです。)

何1000字もあるセールスレターも含まれていますが、それを一言一句、コピーライターの意図を考えていきました。

また、彼が勧める本も手に入るものは全て読んでいます。

どれも「きちんとした」本なので、結論から言ってしまえば時間を掛けて実践しつつ、一歩一歩力を付けていくしかありません。

ですが、実は1つだけ、「魔法の言葉」が紹介されていたのも事実です。

そこで、今月のメインメールではその言葉を考察してみたいと思います。

**

魔法の言葉。

それは13文字。

◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯

どんな言葉か分かりますか?

もしよろしかったら、コピーライティング力の力試しと思ってちょっと考えてみてください。

**

どうでしょうか?

いくつか候補は浮かびましたか?

もしかしたら、この言葉が載っている本を既に読んだことがあってご存知かもしれません。

と、あまり勿体ぶっても仕方がないので、「正解」を発表します。

私が読んだ本に載っていた「魔法の言葉」はこれです:

ひとつお願いがあるのですが

これはRobert Collierの『The Robert Collier Letter Book(邦題:伝説のコピーライティング実践バイブル―史上最も売れる言葉を生み出した男の成功事例269)』で解説されています。

彼がこの言葉をセールスレターの冒頭に入れたところ、成約率が上がったという結果が出ています。

どのような経緯で彼はこの言葉を思い付いたのか?

私の記憶が正しければ(いま手元に本が無いので)心理学の実験結果を知ったそうです。

その研究が主張していたのは「人が1番好意を感じるのは、頼みを聞いてあげたばかりの相手」ということ。

そこで、冒頭に上の1文を入れ、読者に頼みを聞いてもらう文脈にした結果、実際に効果があったという訳です。

ということで、この「魔法の言葉」を必ず冒頭に入れるようにすれば、(相手が飽きるまでは)成約率が上がると期待されます。

ただ、私はそれでは満足できませんでした。

理論物理学者の性かもしれません。

私たちは結果が得られたら「はい、良かったね」と満足はせず、なぜその結果が得られたのか?を考えてしまう生き物なのです。

今回も例外ではありませんでした。

「なぜこの13文字は成約率を上げるのか?」

その論理的土台が分からなかったので、「魔法の言葉」を知ってもモヤモヤしていました。

(理由が分からない場合、なんとかの一つ覚えのように繰り返すことしかできませんからね。)

ですが、若き哲学者の1冊の本を読んだことで、その理由が理解できた気がしたのです。

これはエンゲージメント率を11.4倍に伸ばしてくれた、私が最近発見したばかりの理解ですが、喜んであなたにもお教えしましょう。

その本は『世界は贈与でできている』近内悠太著(NewsPicksパブリッシング)。

タイトルにも入っているように、この本では「贈与」という概念を扱っています。

贈与とは何か?

本の冒頭で近内さんは「お金で買えないもの=贈与」と定義しています。

お金というのは商品やサービスと交換するものです。

したがって、お金の交換を土台とする資本主義は交換の論理に基づいている、と説明されています。

そして、定義より、「交換の論理」以外の論理は「贈与の論理」となります。

言い換えると、贈与は交換ではない為、見返りを求めない行為です。

これだけだと分かりにくいと思いますので、いくつか具体例を見てみましょう。

代表的なのは親の愛情。

親は子供に対して食料、衣服、寝る場所などを無償で提供します。

しかも、その対価として将来こどもから見返りをもらうことは(通常)期待していません。

親の愛情は交換でない以上、定義から贈与となります。

あるいは、駅の階段で重そうな荷物を持って困っていたおばあさんに手を差し伸べる行為。

この場合も「助けてあげたら何か貰えるかな」と期待して助ける方は居ないでしょう。

その為、このような無差別のギブも贈与の例になっています。

もう一点。

2つ目の例のように、見知らぬ方々に手を差し伸べたことが1度はあるかと思います。

その時、どのような感覚だったか覚えていますか?

私は1つ強烈に覚えている瞬間があります。

それはユニセフに募金を始めた時。

私は昔から子供たちの為にできることをしたいと考えていました。

(どこかで書いたかもしれませんが、私が副業を行なっているのは将来的にはそこに繋げる為です。)

ですので、ユニセフへの募金を通して、微力ながら協力できるようになった瞬間、強い感動を覚えました。

実は、このメカニズムも近内さんの本で解説されています。

簡単に言えば、贈与をした者は、被贈与者から受け取るものがあるのです。

そして、その1つが感動や「良いことしたな」という充実感であり、また1つが冒頭でお話しした好意だということです。

つまり、魔法の言葉「ひとつお願いがあるのですが」を入れることによって、語り手に対して読者が贈与をしてくれる構造を作っているということ。

その結果、贈与の論理が働き、贈与者である読者は、被贈与者である語り手に対して好意を抱くという訳です。

それだけではありません。

贈与の大きな役割として関係の構築があります。

どういうことか?

親子の例が分かりやすいかもしれないですが、贈与をすることによって相手が特別な存在になり、贈与者と被贈与者の間に結び付きが生まれます。

あるいは、逆の例を考えてみるのも示唆的かもしれません。

これは本の中に出てくる例ですが、近内さんがコンビニで目撃した場面が紹介されていました。

曰く、小学生が買い物をしていたそうですが、店員さんはその子に対しても敬語で接していたということです。

店員さんはなぜ敬語を使ったのか?

それはお金さえ払ってくれれば相手は誰でも構わないから。

資本主義は交換に基づいている以上、定められたお金を交換してくれさえすれば完結してしまうのです。

したがって、相手が子供だろうが大人だろうが等しく扱います。

そして、店員と客の間には何の関係も生まれません。

記憶にさえ残らない場合がほとんどです。

一方、贈与の場合はそうではありません。

駅で助けたおばあさんは、道ですれ違ったおばあさんとは異なり、(少なくともしばらくは)記憶に残るはずです。

あるいは、こんな例が分かりやすいかもしれません。

混雑した電車に乗り込んだ場面を考えてみましょう。

あなたはスーツケースにカバンを抱えており、立っているのは困難な状況。

車内を見回してみると座席はどこも一杯。

とても座れそうにありません。

そんな時、困ったあなたの様子を見ていた近くのおじさんが、スッと席を譲ってくれたら。

その方に対して親しみを覚えるのでは無いでしょうか?

(言い方が悪いですが)それまでは同じように見えていたおじさん達の中で、席を譲ってくれた方だけ特別に感じ始めるのでは無いでしょうか?

これこそ贈与が持つ性質。

関係の構築に他なりません。

相手と関係を築けること。

これがどれだけ重要なことか想像できますか?

コピーライティング(だけでなく、より一般的に言葉を使って影響を与える場面)では、コピー(より一般的には言葉)を使って

・理解してもらう
・親しみを感じてもらう
・信じてもらう

ことなどを目指します。

ですが、これらは全て関係性の1つである以上、贈与無しには始まりません。

交換の論理に基づいたDM(5月18日のメルマガで引用したもの)のような言葉では成し得ないことなのです。

ここで思い出されるのは、日本一のコピーライターとも呼ばれるMr. Xの本。

マーケティングについて解説した本の中で、コピーにも触れており、そこでは「セールスレターの読者とラポールを築け」と書かれています。

ですが、「ラポールを築け」と言われて「はい、分かりました」と実行できる方はまず居ないでしょう。

あまりにもフワッとしているからです。

ただ、贈与の論理を手にすると、すべきことが明確になります。

贈与をすれば良いのです。

なぜなら、贈与によって読者と関係が構築されるから。

ラポールも関係性の1つである以上、贈与によってラポールは築かれます。

**

長くなって来たので、2つの論理を実際にコピーライティング(や説得的言葉)に利用するにはどうするか?という方法に関してはまたの機会に譲ることにして、今回の話をまとめておきます。

・交換の論理と贈与の論理、2つの論理がある
・交換の論理では関係は築かれないが、贈与の論理では関係が築かれる
・関係の1つとして好意やラポールなどがある
・読者に語り手に対して贈与をしてもらえる言葉が魔法の言葉「ひとつお願いがあるのですが」

贈与をしてもらうから魔法の言葉で成約率が上がる、と理解できると他の方法でも成約率アップを図ることができるようになります。

実際、私のテストによると、クリックや遷移など、エンゲージメント率が11.4倍になるという結果を得ています。

その方法については今度お話ししますね。



最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

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