From:Dr.kappa
木曜日、午後11時25分
日本、本州
(これは、2020年7月17日に送信した私のメルマガを一部編集したものです。)
世の中を大きく変える人たちがいます。
彼らは何が違うのか?
洗練。
私はここにエッセンスがあると考えています。
例えばApple。
なぜ彼らの製品は世界中の人々を熱狂させるのか?
この点は以前もお話ししましたが、実は製品自体は競合の製品とそんなに違いはありません。
違いは彼らが発するメッセージの順番にあるのでした。
そして、彼らのメッセージは、受取手の爬虫類脳に刺さるように、周到に磨かれています。
あるいはディズニー。
彼らの作品も見えないところまで工夫が凝らされていることをご存知でしたか?
例えば、シンデレラ城。
東京ディズニーランドの城は51mあるそうですが、視覚的にはそれ以上高く見えている方々が多いようです。
なぜかと言いますと、実は遠近法が応用されているから。
つまり、上に行くほど石垣やタイルを小さくすることによって、強制的に遠近感を出し、実際より高く大きく見せる工夫がなされています。
ビジネスだけでなく、私の本業である学問の分野でも、業界を大きく動かす発見を次々と行う研究者たちがいます。
彼らは何が違うのか?
やはり、思考が洗練されているから、というのが私の現時点での観察です。
その大きな発見の背後には、前回お話ししたビッグアイデアがあります。
では、どうすれば洗練された思考を行い、洗練されたメッセージを発し、洗練された仕事ができるのでしょうか?
どうすれば、そのような詳細、ビッグアイデアに気付くことができるのでしょうか?
あるいは、どうすれば創造的な仕事ができるのでしょうか?
実は、ここまで問題を噛み砕くと、既知の研究がヒントを与えてくれます。
(創造性とビッグアイデアの関係はこのメールの最後でお話しします。)
そこで、今回は「創造的になる方法」というテーマでお話ししたいと思います。
(このメルマガの読者の方々は、経営者や起業家、あるいは起業を目指している方が多いようなので、今回お話しする方法は社内で実践して頂くのも良いでしょう。)
まず、創造的になる方法と聞くと、どのような方法を思い浮かべるでしょうか?
言い換えると、アイデアを出したい時、どのようなことを行いますか?
おそらく、現代の日本だとブレインストーミングを挙げる方が多いかもしれません。
この方法では、とにかくアイデアの数を出すことを目的とします。
したがって、アイデアを出している最中には批判をせず、馬鹿らしいアイデアだと思ってもひたすら数をアウトプットしていきます。
では、この方法で創造的になれるのでしょうか?
実はこの問題を扱った社会心理学の2010年の論文があります。
“Productivity Loss in Brainstorming Groups: A Meta-Analytic Integration”
この論文のタイトルに既に「答え」があるように、少なくともこの研究ではブレインストーミングによって創造性が落ちるという結果が出ています。
(なお、論文の中身は見られなかったので、私は概要だけしか読んでいません。)
もしかしたら、アイデアの数は増えたのでは?と思われるかもしれません。
(ブレインストーミングではとにかくアイデアの数を出すことを狙いとしているので。)
ですが、実は質だけでなく数も落ちるという結果が出ています。
私はこの結果を知って驚きました。
企業など様々な組織で用いられている手法なのに、創造性を下げているではないか、と。
そこで、創造性を高める方法も探してみると、様々な流派があることがわかりますが、ポイントとなるのは批判を入れることだと判明します。
ブレインストーミングでは禁止されているこの要素を入れることで、創造性が高まるという研究結果が出ているからです。
(例えば、カリフォルニア大学バークレー校のCharlan Nemeth教授
の研究など。)
創造性を高める方法の1つの流派として提唱されているのは、ブレインスウォーミングという方法。
この方法は次のように行います。
メンバーで集まって、ホワートボードなど、メンバー全員が見えるものを用意します。
そのホワイトボードの上部にゴール・解決したい問題を書き、下部に使えるリソースを書きます。
そして参加者はしばらく黙って各自でアイデアを出し、問題の解決法を考えます。
(各自の手元にホワイトボードと同じものを書いた紙を用意して、それを使って考えても良いでしょう。)
ある者はトップダウンで問題から考え始めるでしょうし、また別の者は手元にあるリソースからボトムアップで考え始めるでしょう。
そしてある程度の思考の時間を取ったら、各自が考えたことを前のホワイトボードにまとめていきます。
すると、トップダウンとボトムアップ、2種類の思考が中間でぶつかり、具体的な実現可能なアイデアが出てきます。
(この過程で批判が行われます。
例えば、トップダウンで考える者が出した解決策に対して、ボトムダウン思考者から「その手法にはこんなリソースが足りない」という指摘が入るかもしれません。
すると、その批判を受けた者や他のメンバーたちでそのリソースが要らない別の手法を提案することなどができるでしょう。
この批判の過程を繰り返すことで現実的な解決法へと到達できる確率が高くなります。)
より詳しく知りたい場合は、この手法を提案した認知心理学者、Tony McCaffrey氏自身による解説動画(英語ですが)をご覧ください。
この方法は個人で使用することもできるでしょう。
その場合、トップダウンに考える時間とボトムアップに考える時間を区別すると良いと思います。
時間を区切ることで、個人であっても客観的に考えやすくなるからです。
もう1つ私が知っている創造性を高める方法は、ブレイントラストと呼ばれます。
この方法は、トイ・ストーリーなどで有名なピクサーが用いている手法です。
彼らは問題に直面すると、様々な専門家を集め、現時点での未完成のアニメを上映し、批判を求めたと言います。
そして、率直な意見を出してもらい、最終的な決定だけは監督が行うというスタイルです。
この手法に関しては、例えば次のような記事が見つかります。
この記事でも紹介されていますが、ピクサーの創設者が書いた本「ピクサー流 想像するちから」でこの手法が解説されているようなので、ご興味がありましたら手に取ってみると良いでしょう。
この手法でもポイントは批判にあります。
そして、どちらの手法を用いるにせよ、アイデアが磨かれていきます。
つまり、アイデアはそれぞれ孤立しており、「出すもの」「思い浮かぶもの」というイメージが強いですが(これがブレインストーミングでとにかく数を出そうとする理由だと思います)、今回ご紹介した研究は、どうやらこのイメージは正しくないということを示唆しています。
良いアイデアというのは突然パッと思い浮かぶものというよりは、つまらないアイデアを批判という砥石で磨いていくものというイメージの方が近いでしょう。
こうして鋭く磨かれた洗練されたアイデアは、人々に深く刺さり、世の中を大きく変えてきました。
要するに、アイデアは出すものではなく、磨くものというのが「正しい」理解だと様々な研究は示唆しています。
創造性の理解が深まったところで、冒頭の話に戻りましょう。
この「正しい」理解を獲得した今、どうすればビッグアイデアを見つけ、人々に影響を与えることができるでしょうか?
どうすれば、思考・メッセージ・仕事を洗練させることができるのでしょうか?
「答え」は既に出ていますが、バラバラと数だけ出し、その中にダイヤモンドのようなアイデアがあることを期待するという偶然頼みではなく、いくつかの良さげなアイデアを磨いて行くのが効果的です。
批判によって着実に磨いて行くことにより、偶然ではなく必然としてビッグアイデアに到達できる確率が高くなります。
思考を磨き、メッセージを磨き、仕事を磨いて、洗練を目指しましょう。
P.S. 私のサークルでは、コピーライティングで最も重要なヘッドライン(とリード)を書き、それをメンバーで批判し合います。
その結果、コピーライティング能力だけでなく、アイデアを磨き、ビッグアイデアへ到達する能力の向上、あるいは思考の明晰化の訓練にもなります。
ご興味がありましたら、メンバー全員で訓練しつつ、それを実際の稼ぎに結び付けていきましょう。
最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。
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