この絵に「正しく」騙されるか?

From:Dr.kappa
月曜日、午後2時47分
大学、オフィスより

突然ですが、このオレンジ色の円はどちらの方が大きいでしょうか?

エビングハウス錯視

実はどちらも同じ大きさです。

問題をご存知だったら簡単だったかもしれませんね。

この錯視は忘却曲線で有名な心理学者エビングハウスにちなんで、
エビングハウス錯視と呼ばれています。

(画像はウィキペディアから引用しました。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/エビングハウス錯視

ちなみに、この錯視は以前お話しした、
「全ての価値は相対的」の具体例にもなっています。)

今回の補足メールをこの問題から始めたのは実はIQに関連するからです。

(メインメールが入ったので、1回分遅くなってしまいました。)

…と、その話をする前に、別の質問を考えてみたいと思います。

人間と人間以外の動物。

2者を分ける決定的な違いは何でしょうか?

言葉(文字)。

そして、その使用。

人間は言葉を獲得することによって抽象思考が可能となりました。

この能力を測る指標が他でもなくIQです。

なぜ、そう言えるのか?

いくつかの実験を挙げてみましょう。

これらの実験では2つのグループ

・農場関係者
・人里離れた村の住人

を比較しました。

彼ら被験者は、様々な物、例えば

・綿
・ピスタチオ
・水

などを見せられ、それらをグループ分けするよう指示されました。

すると、現代化の影響を受けていた前者の農場関係者は
容易に色や形によってグループに分けて見せます。

一方、現代化があまり進んでいない後者の人々は
「全て異なるから一緒にできない」と答えたそうです。

この実験はどんな能力を見ているのでしょうか?

問題自体はIQテストの類似性の質問に似ています。

つまり、抽象思考能力の一部である、
類似性という共通点を抽出する能力をIQで測れると言えるでしょう。

一連の実験では、他にも日々の経験から離れて思考する能力が見られました。

例えば…

「北のはずれには雪があり、そこの熊は全て白い」というルールを与えた後に、
研究者は被験者が訪れたことの無い北のはずれにある地名を出し、
「そこの熊は何色か?」と聞きました。

すると、後者の人々は「行ったことのある者しか分からない」と答えたそう。

ここでも個々の具体から離れて抽象的に考える能力が見られています。

この実験の2つの被験者グループを分けていたのは教育です。

教育ではまず文字・言葉を学び、それを使って抽象的に考える訓練をします。

それ故、教育を受けていた前者の者たちは容易に抽象思考ができましたが、
教育をあまり受けていない後者の者たちは具体ばかりを見る傾向がありました。

これらの一連の実験より、抽象思考能力は(だいたい)IQで測れることが分かります。

さて、ここで冒頭の問題に戻りましょう。

今、このメールを読んでいると言うことは、あなたは間違いなく教育を受けている筈です。

したがって、抽象思考能力をお持ちです。

その結果、冒頭の錯視では右側の円の方が大きく見えたと思います。

(少なくとも私にはそう見えます。)

「何を当たり前のことを言っているんだ?」と思われるかもしれません。

ですが、興味深いことに、上でお話しした、教育を受けていない方々は
「正しく」両者の円は同じ大きさだと答えたのです。

抽象化せず、目の前にあるものをそのまま見るが故に
錯視に騙されなかったと考えられます。

ここから何が学べるか?

(1つは)言葉は感覚にも影響を及ぼすという事実。

(この主張自体には以前も触れましたね。

色に対する言葉を持っているか否かで
脳の働きまで変わることを発見した研究をご紹介しました。)

言い換えるなら、「世界は言葉でできている」こと。

この観察は現代思想の出発点になっています。

(そして、私の理論の土台にも。)

あまりにも重要なので、これは公理の1番にしています。

この点はこれからも深掘りしていく予定です。

もし、誰よりも深く世界を洞察した天才、分析哲学を切り開いた開拓者の原典に興味がありましたら、こちらをお勧めします。

私自身はこれを読んだのですが、訳者による巻末の解説が分かりやすいと思います。

哲学書なので簡単ではないですが、抽象思考を訓練するには良い題材(牛になって何度も読み返すことで顎が鍛えられます)です。

(簡単なものばかり消化していても、原理的に相対的にしか価値を出せない社会では「無価値」になってしまいます。)

人間と認識に対する観察も深めてくれますし。

個人的には1+1=2の証明が面白かったです。



最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

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