From:Dr.kappa
火曜日、午後7時43分
大学、オフィスより
先日、友人たちと夕食を摂っていた時のこと。
彼らは前日に「魚のフォアグラを食べた」そうで、それが何か?という話題になっていました。
その場では誰も調べなかったので、記憶や推測頼りに「アンコウだろう」という点に落ち着きました。
(ちなみに、いま調べてみたところ、アンコウやカワハギなどの肝のことを「海のフォアグラ」と呼ぶようです。)
夕食の席では、そこからフォアグラの生産方法に話が移ります。
フランス料理に詳しい友人曰く、
「口を開けさせて強制給餌で肝臓を太らせる
とても過酷な生産方法」
とのこと。
私も昔聞いたことがあった気がしますが、実際にどんな方法が取られているのかは知りませんでした。
これも調べてみると、彼の言葉から想像した以上に酷いことが分かりました。
(ご興味がありましたら調べてみると良いですが、食事前後は避けることを個人的にお勧めします。
私は夕食後に調べてしまい、胃が重くなるような感覚を覚えました。)
このような方法はまだ対動物なので許されています。
(と言っても、良く思わない方々もいらっしゃって、反対運動も起きているようです。)
ですが、対人間では許されません。
ところが、ガチョウや鴨に対する物理的な方法とは異なっても、概念的には全く同じことをしている方が少なくありません。
私自身、幾つか思い当たることがあり反省しています。
特に人間と言葉の研究を始めて間もない頃は酷かったと思います。
コピーライティングの教科書で学んだ通りに書いていたので、「相手を動かそう」という意図で一杯の、とても目を当てられないような言葉を書いていました。
**
ここで思い出されるのが、先日聞いた学者さんの話。
彼は(一部で)「自然な成長とは何か?」という話をされていました。
文脈から予想が付くかもしれませんね。
そう、外から強制される「変化」ではなく、勝手にやってくるものが成長だ、というのが彼のメッセージだと私は理解しました。
つまり、強制給餌(ガバージュと呼ばれます)によって10倍もの大きさまで肝臓を肥大させるようなものではなく、自ら行動した結果として手に入った変化だということ。
外からの力は場合によっては確かに効果があります。
フォアグラも肝臓が10倍にまで肥大はしている訳です。
ところが、その「代償」としてシステムには様々な「不具合」が生じます。
フォアグラの場合には
・異常に大きな肝臓が内臓を圧迫して呼吸困難
・脚が体重を支え切れなくなる
・肝臓の機能不全
などが報告されています。
これらの症状に既視感を覚えるのは私だけでしょうか?
・親に勉強しなさいと言われて育った子どもは勉強が嫌いに
・過度な競争の中で疲弊、燃え尽き
・上司に言われて参加させられたセミナーで関心を失う
私は鳥に対する強制給餌と全く同じことが、人間社会でも起こっていると感じずには居られません。
(以前の私含め)多くの方々はそもそも「認識的ガバージュ」をしていることに気付いていないので仕方ない部分もあります。
ただ、過去の私への忠告を込めて敢えて強い言葉を使うなら、現在の私は次のように考えています。
「人を動かす」という考え自体が傲慢。
ただし、そうは言ってもビジネスや交渉、人付き合いでは相手に影響を与えたい場面も出てきます。
このような時、私たちはどうすれば良いのでしょうか?
**
ここで私の頭に浮かぶのが水泳。
私は泳ぐことが好きで、毎週のようにプールに通っています。
理論物理学者だからでしょうか、私の泳法は流体力学に基づいたもの。
最小限の力で最も効率良く進むように考えられたフォームです。
(私がどれだけ実現できているかは別として。)
このフォームで泳いでいると、水面を滑るような感覚を覚えます。
これは経験してみないと分かりにくいのですが、私は一度味わった瞬間から虜になりました。
今ではこの感覚を楽しむ為に泳ぎに行っていると言っても過言ではありません。
滑るように泳いでいると、隣のレーンを泳いでいる人たちが見えます。
多くの方々は足が沈み、水面に30度から45度くらいになっています。
身体全体が抵抗になっているので進みづらいのは傍から明らかですが、本人は頑張ってバタ足をし、腕は振り回して何とか進もうとしています。
一方で、上手なスイマーも目にします。
彼(女)らは水面に張り付くように身体が水平。
キックもほとんどせず、滑るように進んで行きます。
自然な成長や人に影響を与える方法を考えた時、私の頭に浮かぶのは彼(女)ら2タイプのスイマーの違いです。
一方は大きな抵抗を抱えながら、水を思い通りに動かそうと手足でもがいている。
もう一方は寧ろ水に乗るように抵抗を無くし、小さな労力でスイスイと進んで行く。
不自然な前者はシステムに不具合が生じます。
具体的には、
・思ったほど進まない
・すぐに疲れる
・足がつる、筋肉痛などの症状
などなど。
自然な後者は水のメカニズムを利用します。
・最小限の労力で最大の推進力
・速く長く泳げる
・筋肉痛などもほとんど無し
水のように物理的か、あるいは認識のように目に見えないかという違いはありますが、目の前の相手に影響を与えたい時、これ以外の方法は無いのではないでしょうか。
つまり、認識上の抵抗を取り除いてあげること。
そうしたら、相手自身が抵抗の無い方向へするっと滑り出してくれるとは思いませんか?
現時点で、私はこれが「正しい」人への影響の与え方だと考えています。
最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。
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