メジャー0

From:Dr.kappa
月曜日、午後5時16分
川辺、カフェより

2人の男たちがいた。

2人は同じ小さな村育ち。

2人とも体が大きく、力も強かったので、揃って「ガキ大将」だった。

2人が生きた時代は400年前。

当時まだ戦争が盛んだった為、2人は17歳で合戦へ。

生まれも育ちも言葉(したがって価値観)もよく似た2人だったが、この合戦が彼らのその後の人生を分ける。

1人は職業で成功せず、許嫁に嫌われ、名声も無し。

もう1人は彼の分野で第一人者となり、女性だけでなく同性からも慕われ憧れられる存在に。

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もしかしたら気付かれたかもしれませんが、これは私が好きな小説のプロットです。

そう、吉川英治の『宮本武蔵』。

今またこの本を読んでいますが、まるでWall Street Journalの2人の男たちのように、本位田又八と宮本武蔵が対比されていることに気付きます。

まだ読んだことが無い方の為に、出来るだけネタバレ無しで必要なあらすじを書いてみましょう。

合戦を生き延びた2人は、勝軍から逃れ、ある親子の家に隠れます。

ここで、又八は目の前の女性の誘惑に負けてしまいます。

一方、武蔵(当時はたけぞう)は自分の足で人生を歩き始めます。

具体的には、剣の道。

武蔵は数年の修行を得て、着実に実力を蓄えていく一方、親子に養われ、飲んで暮らす又八は自活の力を欠きます。

その後、又八は親子と離れるのですが、数年間の怠惰な生活のせいで、今日の食事にも困る始末。

偶々手にした大金で、偶々知り合った者に職業の斡旋を頼みます。

この依頼がどうなったかは明かさないことにしますが、ここまでの流れから大体予想は付くでしょう。

その後も又八は足元の定まらない人生を送り、その生き様は小説の最後まで続きます。

一方の武蔵は、この小説で更に有名になったように、剣豪佐々木小次郎との決闘で勝ちました。

これにより、武蔵は日本一という名声も獲得します。

この決闘で小説は幕を閉じる。

(ちなみに、吉川英治は決闘を終えた宮本武蔵の心境を代弁する一場面を描く為に、この長編小説を書いた、と聞いたことがあります。

たった一言のメッセージを紡ぐ為に、その何倍、何十倍、何百倍もの準備をする姿勢は見習いたいと個人的には思っています。)

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さて、ここで1つ質問させてください。

このあらすじを読んで、2人の違いはどこにあると思われますか?

もし「これじゃないか」というお考えがありましたら是非「武蔵と又八の違い」をメールで教えてください。

個人的には彼らの決定的な違いは次の点にあると考えています。

それは、思考方法。

又八はチャンス追求型の人生を送っています。

一方で、武蔵は戦略型の人生を送った人物として描かれています。

(個人的には求道型と呼んでいますが、後の対比がわかりやすいようにこの表現を選びました。)

今このメルマガを読んでいる方であれば、この表現でピンと来るかもしれません。

そう、この対立概念は、リッチ・シェフレンを有名にした2タイプの経営者と同じです。

リッチはビジネスの文脈で語りましたが、個人的にはこの概念は人生一般にも拡張できるだろう、と思っています。

その典型的な2人が武蔵と又八です。

上で見たように、又八は目の前のチャンスを追い求めています。

自らを鍛え上げ、自力を付けるような面倒はしない人物として描かれていましたね。

・剣術の鍛錬はしない
・酒や女性の誘惑に負ける
・知り合って間もない者に自分の人生を左右する職の斡旋を頼む

まさにチャンス追求型の人生です。

一方の武蔵はどうでしょう。

彼は愚直に剣の道を進む者として描かれています。

・来る日も来る日も少しの怠惰も惜しんで鍛錬
・身なりは構わず、好きな女性も二の次
・剣道という自ら決めた道を進んでいる

リッチ・シェフレンの戦略型とは違う部分もありますが、剣道の探求という目標に集中している点では戦略的と言えるでしょう。

「成功」という言葉で何をイメージするかは一人一人異なりますが、どちらの方が成功しているか?と聞いたら「武蔵」という答えが多いと思います。

「そんな古臭い話、しかも小説という架空の人物を持ってきても説得力が無いよ」という声もあることでしょう。

そこで、まさに現代を生きている人物も1人だけ取り上げてみたいと思います。

宮本武蔵は文字通りの二刀流で有名ですが、400年後の今、二刀流と言うと大谷翔平選手が有名かもしれません。

(彼の場合はピッチャーとバッターの「二刀流」ですね。)

では、大谷翔平選手はチャンス追求型、戦略型、どちらでしょうか?

(もちろん、どちらにも属さないという第三の可能性も論理的にはあり得ます。

ただ、その場合もどちらに近いか?という問いは有意味です。)

この問いを考えるためのヒントとして、1つの画像を見てみましょう。

比較的見やすいサイトとして、次を挙げておきます:
http://nms-neurosurgery.com/moritablog/405

これは大谷選手の目標達成法として有名になったマンダラチャートと呼ばれるツールです。

この画像からは色々なことが読み取れますが、このメールではチャンスvs戦略だけを考えたいので、1点だけ見てみます。

それは一発逆転のようなチャンスを追求しているか?という点です。

私は野球は詳しくありませんが、そんな私でも知っているような言葉ばかりが彼のチャートには載っています。

特に個人的に印象的だったのが、地道な項目ばかり挙げられている点。

ランダムにピックアップすると

・スタミナ
・礼儀
・本を読む

彼のレベルまで行うことは難しいにしても、どれも誰でも今日から鍛えられるようなものばかりだとは思いませんか?

彼のマンダラチャートには、存在するかもわからない「チャンス」を追い求める項目はありません。

(ちなみに、大谷翔平選手がこのチャートを書いたのも17歳の時らしいですね。)

・宮本武蔵
・リッチ・シェフレン
・大谷翔平

「成功」する者たちの共通点を挙げよ、と言われたら私なら「戦略型人生だ」と答えるでしょうか。

(個人的には一歩一歩山を登るような感覚が好きなので、求道型と本心では言いたいところですが。)

「より良く生きたい」と望みながら、「思うようにいかない」と感じている方は、一発逆転という「甘いチャンス」を追求していませんか?

1つの目標を決め、少なくとも数年間、着実に鍛錬を続けていますか?

又八のような人生になっていませんか?

又八型から武蔵型の人生に変える。

そうはっきりと認識できたら着実に人生は良くなっていくと私は信じています。


P.S. もちろん、稀に稀有なチャンス(例えば宝くじが当たって6億円を手にするなど)を掴む方もいらっしゃいます。

ただ、そのような方が何名いらっしゃるのでしょうか?

地球上の人口は80億人を超えたようですが、あなたや私がその幸運に恵まれる確率は0.001%にも届きません。

1000万分の1、数億分の1とも言われています。

このような小さい確率は実際的には無いに等しい。

理論物理学者の知人はこのような稀な事象を「メジャー0」と言っています。

メジャーというのは日本語で測度と言い、高校で習う積分のdxなどを指します。

「実際的には起こらないよね」を数学語に翻訳したのが「メジャー0」ということです。

ポーカーをするようになって、私は期待値で考える癖が付いて来ましたが、6億円をもらえる事象も確率0なら期待値には1円も寄与しません。

一方で、毎日、明日の期待値を上げる行動をし続けたらどうなると思いますか?



最後までお読み頂き、どうもありがとうございました。

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